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フランスでも高給批判

 フランスでは今日(29日)から夏時間に移行しました。まだ肌寒い日が多いですが、日もだんだん長くなり、ようやく春がやってきたという気分になります。
 ところで、アメリカでは国から多額の補助金を受けている大手金融機関の幹部が巨額の報酬を受けていることが批判されているようですが、このところフランスでも同じような問題がメディアをにぎわせています。
 他国の例に漏れずフランスでも、このところの経済危機の影響を受け、政府が金融機関や自動車会社等の救済に乗り出していますが、こうした企業の幹部が、ストックオプション等の形で巨額の報酬を受けているというのです。新聞では、企業トップの年収ランキングなるものも掲載されていました。それによれば、LVMH(ルイ・ヴィトン=モエ=ヘネシー)社のアルノー氏(1373万ユーロ)とロレアル社のアゴン氏(1311万ユーロ)が双璧で、ダノン社のリボー氏(818万ユーロ)がつづきます。金融や自動車では、5位におなじみゴーン氏(ルノー、690万ユーロ)、6位にBNPパリバ銀行のプロ氏(561万ユーロ)といった具合です。
 ところで、リストラ事案が相次ぐ中、企業幹部のこうした行為には批判が集まるのも当然で、サルコジ大統領も、デクレ(政令)で規制を行う意向を表明したところです。アメリカと違い、フランスでは民間企業に対する国の関与が普段から多いため、こうした規制は一般にはむしろ当然視されているようにも思われます。
 他方、リストラと言えば、ただでさえ高い失業率は、最近ますます上昇し、2月の失業者数は238万人に達したと報道されています。特に、日本のような新卒者の一斉採用がないためか、若者の失業率は異常に高く、それが大学院への進学率の高さにも表れているようです。最近では大規模なデモやストが行われており、社会不安が高まっています。個別の工場の閉鎖のニュースがわざわざ全国ニュースで報道され、新聞でもどの街のどの企業がどのくらいの規模のリストラを行ったのかという情報の一覧を全国地図上に表示したものを掲載したりしています。
 ソニー・フランスでは、ビデオテープ(!?)を生産していた工場の閉鎖を決定したところ、3月半ばに現地法人の社長が従業員によって工場内に軟禁される事件が発生しました。また、つい最近も、3M社で同様の事件が起きたようです。驚いたことに、日本では一面トップ級のニュースかと思うのですが、こちらでは普通の扱いです。報道によれば、「ソニー・フランスの広報担当者は、『このような事態は外国では驚くべきことなのかもしれないが、フランスではそれほど珍しいことではない』と述べ、同社は告訴しないだろうとの見通しを示した。フランスでは企業幹部が従業員に軟禁される騒ぎがここ数年で数件起きている。」ということらしいのですが…。
 それでも、フランスの海外からの直接投資受入額は、米国に次ぎ、英国と並ぶ世界2位だそうです。


パリの中の日本

 今週は、約半年ぶりにモンマルトルの枝魯枝魯(Guilo Guilo, 8 rue garreau 75018)に行ってきました。昨春に京都からパリに移転オープンしてから3度目くらいですが、今回はリールでお世話になった先生が和食が食べたいというので、最近身重な妻と3人で行ってきました。料理の内容は「くずし懐石」と銘打たれた通りの内容で、京都時代と同様の路線かと思います。45ユーロのおまかせコースのみ(夜遅くには軽いコースもあるよう)で、これも京都時代と同じです。もっとも、京都のときは3000円くらいだったので、お値段の方はちょっと高級になっていますが、パリではもともと外食が高いことと、他のちょっといい和食店ははるかに高いので、良心的なのだと思います。司法修習時代からたまに通っているということで、シェフにも顔を覚えてもらいましたが、お話によるとこちらでも引っ張りだこのようです。前回一緒に行ったRobpapaさんの超まめなブログには、お料理のきれいな写真が多数掲載されています。
 ということで今回は、普段使っている日本関係のお店などを紹介したいと思います。日本関係のお店などが集中しているのはオペラ座近くのサン・タンヌ通り周辺です。偶然にも今住んでいるアパルトマンはそのエリアから徒歩圏内にあるので、何かと便利です。こちらでよく利用するのは、日本でもおなじみのブックオフです。意外と専門書のようなものも置いてあるのですが、やはり回転は遅いようなので、ブックオフ独自のシステムのおかげで意外なものが2ユーロで手に入ったりします。なお、日本の皆さんが行かれる店(写真奥)はもっぱら日本の本やCD等を置いているのですが、斜め向かいにフランス人向けの店(写真手前)もあり、こちらでもたまに買い物をします。書店では、少しはなれたところにジュンク堂もあり、こちらは小規模とはいえさすがジュンク堂という感じで、専門書も結構ありますが、いかんせん価格が高い(日本の3倍くらい)ので、これまで2,3冊しか購入したことはありません。

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 サン・タンヌ通り周辺には、日本食材専門店や韓国・日本食材店が数店舗あるほか、和食店も、ラーメンなどB級グルメから、コース100ユーロという本格店まで沢山あります。その中でも何度か行っているのが、Chez Miki(5 rue de Louvois 75002 )というところです。http://www.hayakoo.com/chez_miki/ 
  こちらは、日本で言う洋食屋で、小さなお店ですが、なかなか美味しいと思います(夜は定食がないので、お値段もそれなりになりますが)。さらにそれから、この通りでもっともお世話になっているのが、十時やという弁当(+日本食材)店で、から揚げ弁当やら照り焼き弁当やらのお弁当が買える貴重なところです。弁当は9ユーロ前後(写真はもっともコストパフォーマンスの良いと思われるミックスフライ弁当9.5ユーロ)で日本の感覚からは若干お高めですが、原則として年中無休で、開店時間も長いので便利です。ただ、メニューが全く変わらないので、時々変更してくれるとさらに有り難いところです。
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 オペラ=サン・タンヌ地区からは離れますが、セーヌ左岸のほとり、エッフェル塔のたもとというすばらしい立地にあるのが日本文化会館(http://www.jpf.go.jp/mcjp/)です。予算が限られる中、展覧会その他各種文化行事を精力的に展開されているようですが、残念ながらまだ参加したことはなく、利用するのは専ら図書室で、日本に関する和英仏の書籍が揃っています。日本文化の紹介が目的ということで、人文系が中心ですが、法律書も和欧それぞれ本棚2,3本分位は置かれています。パリには他に日本の法律書がまとまって置かれているところはほとんどないので、大変有り難い存在です。法律関係の雑誌では、唯一ジュリストがあります。まあ一つだけといえば確かにこのタイトルなのでしょうか。開館時間が大変短く、長期休暇が長いのが玉に瑕です。
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シアンスポ①

 シアンスポ・パリでの講義も今週で3回目になり、また、同じく今週になって構内に机を確保したので、頻繁に出入りするようになりました(初回、2回目までは講義のときだけ「出勤」)。だんだん様子も分かってくると思いますが、今回は概要的なことを紹介したいと思います。

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 シアンスポは、1872年にÉcole Libre des Sciences Politiques(政治学自由学校とでも訳すのでしょうか)として、フランス人権宣言をめぐるイェリネックとの論争で日本でも知る人ぞ知るエミール・ブトミーらにより創設されました。その後、社会科学系のエリート養成校として発展し、フランスの政官界の有力人物の相当部分はこちらの出身者であることは良く知られています。大統領で言えばミッテラン、シラクがOBですし、現役有力者で言えば、社会党の最近の内紛の主役であるマルチヌ・オブリ現第一書記(党首)と前回の大統領候補セゴレーヌ・ロワイヤルは両者ともOGです。経済界では、日本の経団連にあたるMEDEFの委員長であるロランス・パリゾもOGだそうです。
 このように、かつては普通の(?)エリート校だったのですが、おそらく90年代辺りから猛烈な拡大路線を走っているようで、国際的なネットワークを広げています。今では世界260以上の大学と提携しており、6500名の学生のうち30%が留学生だとされています。実際、私の講義でも、20名ほどの登録者のうち、フランス人は数名で、3分の2以上が外国人留学生です。しかも、この路線はさらに進められるようで、半数を留学生にするという計画のようです。そのため、半数の講義は英語で、フランス語での講義は半分ということのようです。このように、その気になればすぐに世界中から学生を集められるというのは、アメリカには及ばないとはいえ、伝統国フランスの国際的なプレゼンスの強さを感じさせられます。
 学長の声明には大学ランキングへの言及もあり、英タイムズ紙のランキング(社会科学部門のことのようです)では、LSEは4位なのにシアンスポは105位と、低迷しているのが現状なのですが、トップレベルに引き上げたい旨が明言されており、それに向けて様々な改革が進行中ということのようです(ちなみに同ランキングでは京都大学は42位)。さらにちなみに、タイムズランキングによれば、シアンスポの学生の国際化レベルは世界トップレベルのようです(ということは他の指標が相当…)。 
 提携関係では、ニューヨークのコロンビア大、ジョージタウン大、ベルリン自由大学、LSEといったところとダブルディグリー協定を締結しています。日本の大学とは、ダブルディグリー協定こそないですが、国立・私立の有力大学10校(東京大、早慶など)との協定が存在するようです。京都でも大手三大学のうち、同志社・立命館とは全学レベルの協定があります(京都外大とも)。ですので、今日もシアンスポの学生が京都の街で勉学に勤しんでいるかもしれません。早稲田大などは、シアンスポ内に事務所があります(私の講義のある教室の近くなので、今週お邪魔してきました)。http://www.waseda.jp/jp/sp/s_message/051101.html
 このように多くの協定を結ぶのには、シアンスポのカリキュラムとの関係があります。ここは学部から修士に対応する5年制なのですが、3年次には全員海外留学ないし研修をすることになっているので、多くの協定が必要となるということのようです。
 教育内容としては、学際性を売り物にしているようで、確かに驚くほど沢山の講義が開講されています。ただ、個人的な感触では、特に公法のようなマイナー分野では、学生さんの前提知識に難があるので、若干やりくにさはあります。また、教員控え室には数百人分はあろうかというメールボックスがありますが、常勤教授はそれほど多くない(パンフレットによれば常勤教員は70名)ということは、ほとんどが非常勤ということになり、このあたりはどうなのかという感じもします。
 パンフレットによれば、教育目標として、知識の習得と並んで、コミュニケーション能力(語学だけでなく説得力ある口頭・文書表現)の涵養、及び一定の態度(知的な勇気、困難を克服する能力など)の養成が掲げられています。確かに、後二者もグローバル時代に国際的に通用する人材に求められる能力だと思います。もっとも、日本の大学でもこの種の目標を掲げることは珍しくないとは思いますので、実際にどのようなことをしているのかが問題なのでしょうが。この点、シアンスポにおいては、他の先生の話や学生の体験記を見る限りはレポート提出や口頭報告・議論が重視されているようです。もっとも、私の場合は諸々の事情に鑑み、普通の講義をしています。
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憲法院も50周年

 リールに引き続き、パリ政治学院(シアンス・ポ)というところで講義をすることになり、今週は2回目でした。リールとは違い、こちらは正式の講義であることなどで中々大変で、まだいまひとつ軌道に乗っていない感じがします。
 ところで、フランスで違憲立法審査を担う憲法院(Conseil constitutionnel)がこのたび創設50周年を迎えたということで、3月5日には記念行事が行われるとともに、記念切手が発売されました。先日の記事でも紹介したように、現行第5共和制憲法が50周年ということですので、同憲法によって創設された憲法院も50周年というわけです。切手については、日本の友人の情報提供を受けて、この日にパレ・ロワイヤルにある憲法院入り口ロビーで行われた特別販売に行ってきました。
 すると、黒山の人だかり、というほどではありませんが、20-30人ほどがロビーで切手を購入しておりました。また、その傍らには10人ほどの列が出来ており、どれどれと思って見てみると、ジャン=ルイ・ドゥブレ憲法院長が台紙付切手にサインをしているではありませんか。ということで、私もサインしてもらいました。院長は元下院議長という政治家ですので、この手のパフォーマンスはお手の物なのでしょうか。

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 憲法院は他にもこの50周年を機に様々な行事や新しい試みを行っています。昨秋にはホームページのリニューアルや、記念のシンポジウムが開催されました。また、面白いのは、憲法院の1958年から83年までの重大事件の評議を取りまとめた書籍が出版されるということです。通常、裁判所(もっとも、憲法院は裁判所とは言えませんが…)での事件の評議は秘密とされており、日本でも同様(裁判所法75条)ですが、フランスでは2008年7月15日の法律により、すべての裁判所について、25年経過後に評議の記録を公表することとされたということです。上記書籍はこの法改正を受けたものです。日本でも裁判員制度との関係で、国民とのコミュニケーションに対する裁判所の姿勢は大きく変わったようにも思いますが、フランスの裁判所(憲法院を含めて)も日本とはまた違った多様なやり方でコミュニケーションを図っているように見えます。

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