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シアンスポの入試とアファーマティブアクション(シアンスポ④)

 バカンスシーズンになりました。7月に入り、バカンスで南仏あたりに出かける人々で込み合う駅や渋滞する高速道路の様子を伝える報道がぐっと増えてきました。また、夏の大イベントであるトゥール・ド・フランスも、昨日から始まり、バカンス気分を盛り上げます。今年のトゥールは王者ランス・アームストロングの復帰が大きな話題ですが、日本でも日本人選手が久しぶりに2名も参加すると言うことで関心が高いのではないでしょうか。それにしても、今週の暑さは尋常ではなく、30度を越える日が続きました。もちろん関西や関東よりは気温的にはましなのですが、こちらではエアコンの普及度が著しく低いので、体に応える度合いはこちらの方がきついように思います。特に今週はスーツを着て出かけることが多かったのでなおさらです。
 とにかく、世の中の多くの人々はうきうきしているのですが、そうでもない人もいます。シアンスポの受験生もそうした人々に含まれるでしょう。実は、シアンスポの入試は8月24・25日に行われるので、受験生はきっと追い込みの勉強にかかっていると思われます。周知のように、フランスでは大学入試というものはないのですが、シアンスポのようなグランド・ゼコルでは選抜があり、書店に行くと対策本が並んでいます。
 シアンスポの学部レベルの入試には幾つか種類があるようで、①今年バカロレアを取得した志願者向け、②昨年取得した志願者向け、③外国の高校を卒業した志願者向け、そして④「優先的教育協定(Convention d'Education prioritaire)」に基づく選抜といったものです(ほかに、パリ第1、第4、第6大学とのダブル・ディグリープログラムなど)。 ①については、4つの科目(一般科目、20世紀史、外国語、資料に基づく試験(小論文のようなもの?))で試験が行われますが、各科目3時間か4時間の試験であり、かなりハードそうです。過去問も公開されていますが、例えば、2008年の一般科目の問題は、テキストの論評、または「科学は知識欲に応えるものか?(La science répond-elle au désir de savoir?)」という質問のいずれかを選択するというものでした。
 ところで、バカロレアでもこの種の出題はあるようですが、この種の試験問題は、日本の大学入試のように知識を問うものとは違い、特殊な対策、あるいは特殊な人文的教養が必要とされます。この点が、シアンスポのような教育機関の門戸をエリート層以外の人々に閉ざしてきた1つの原因であるとも言われてきました(ただし、試験である以上対策は可能なので、実際にはそこまで閉ざされているわけではないと思われます)。
 そこで、2001年から導入されたのが④の選抜方法で、要するに郊外の荒れた地区(行政的には「優先教育地区」という名称)にある高校と協定を結んで行われるものです(現在62校)。 
 具体的には、まず各高校内で選抜が行われます。この際には成績(校内選抜試験やバカロレア)もさることながら、知的好奇心や意欲も基準となっていることが注目されます。その後、シアンスポで面接が行われるのですが、ここでもやる気や批判精神といった点が評価されるとのことです。ですので、現在の成績というよりは将来の「伸びしろ」を見るということでしょうか。
 要するにアファーマティブアクション(フランスでは積極的差別(discrimination positive)という)ですが、フランスでは、人種等に基づく優遇措置は憲法上認められないというのが一般的見解ですので、出身高校の立地により実質的にこうした措置をとっているわけです。これについて、7月3日付ルモンド紙にパリ郊外移民地区にある高校を取材した特集記事があり、しょっちゅう学校をサボっていた学生が教師の援助を得てシアンスポに合格する話や、高校内に特別クラスを設置して一部の生徒だけを手厚くフォローすべきか、それとも学校全体を底上げするのにエネルギーを使うべきかで悩む教師たちの姿などが紹介されており、大変興味深いものです。


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コメント 2

yms

ツール・ド・フランス、生で見たいです・・・
と生中継を見ながら書き込んでます。

日本ももう少し競技人口が増えればいいのですけど・・・
一応、先週参加した富士スピードウェイのレースは2300人のエントリーがありましたけど。

#気がついたら自転車が3台も・・・
by yms (2009-07-07 23:04) 

sog

いつもコメントありがとうございます。自転車競技をなさっているのですね。
私は街中では自転車移動ですが、競技のほうはさっぱりです。ツールの方は、むかし旅行で来たときに、たまたま最終日でパリの最終ステージを見たことがありますが、すごい迫力だったのを覚えています。去年は見逃したので、今年はできれば見に行って見たいですね。
by sog (2009-07-08 14:21) 

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