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ヨーロッパ議会議員選挙とエストニアのインターネット投票

 本日(6月7日)は、フランスにおけるヨーロッパ議会議員選挙の投票日でした。ヨーロッパ議会は、近年権限が強化されてきているとはいえ、まだまだ市民にとってはなじみが薄いようで、毎回棄権率(フランスでは投票率とは言わずこのように言います)の高さが話題になります。今回の棄権率は約6割に上り、過去最高だと言われています。投票率は4割ということになりますが、フランスでは選挙人名簿への登載は原則として自ら手続をとらなければ行われないので、実際の投票率はもっと低いと思われます。とはいえ、比例代表制で行われるヨーロッパ議会選挙は、国内議会では当選のおぼつかない小政党にもチャンスがあるため、その意味では国内的にも重要かと思われます。

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 ところで、この関連で先日のルモンド紙に、エストニアのインターネット投票の特集が出ていました。日本でも一部では知られているようですが、この国の電子政府化は大変進んでいるようで、電子政府化全般も電子投票も中々普及しない日本とは大変対照的です。
 エストニアでは、国民はICチップ入りのIDカードを所持しており、これを利用して自宅や職場、ネットカフェのパソコンからインターネットで投票ができるとのことです。すでに2005年の地方選挙、07年の総選挙で試行されているとのことですが、当初はやはり懸念の声もあったようです。例えば、ネット投票では、夫による妻への、あるいは職場の上司から部下への投票の強要のおそれがあるとか、選挙運動員が高齢者の自宅を回って自陣営への投票を誘導するおそれがあるとかの批判です。また、地方在住者や高齢者を主たる支持層とするような政党からは、この方式が選挙結果に及ぼす影響を懸念する声もあったとのことです。
 今回のネット投票は、5月28日から6月3日の間に何度でも行うことができ、新たに投票した場合には、先の投票は自動的に削除されます。また、6月1日から3日の間には投票所も開設され、ここで投票すれば先に行ったネット投票を取り消すことができるほか、7日には、やはり同様に再考の機会があるということです。投票率に関しては、ネット投票により30パーセント割れが懸念される投票率を多少押し上げることが期待されています。
 エストニアでは、ネット投票のほか、上記のIDカードが普及していることにより、様々な行政手続等がネット上で可能となっており、現に利用されています。例えば、今年は、納税者の92パーセントがオンライン上で申告を行い、また、銀行取引の98パーセントはネット経由だそうです。ほかにも、親が子どもの学校生活(成績、出欠、出来事、宿題等)をネット上でチェックすることが可能ですし、駐車場や公共交通機関の支払いもこのカードを読み取り機にかざすことで行うことができるということです。
 このカードはさらに進化中で、携帯電話へのICチップの登載が進められているようで、2011年の総選挙では携帯電話からの投票も予定されています。日本の住基カードとはずいぶん様子が違いますが、この手のものは、普及するには多くの場面で使えるようにし、利便性を上げることが必要ですが、利便性を上げれば上げるほどプライヴァシー面での不安が高まるというジレンマをどう克服するかということでしょうか。
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