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シアンスポ①

 シアンスポ・パリでの講義も今週で3回目になり、また、同じく今週になって構内に机を確保したので、頻繁に出入りするようになりました(初回、2回目までは講義のときだけ「出勤」)。だんだん様子も分かってくると思いますが、今回は概要的なことを紹介したいと思います。

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 シアンスポは、1872年にÉcole Libre des Sciences Politiques(政治学自由学校とでも訳すのでしょうか)として、フランス人権宣言をめぐるイェリネックとの論争で日本でも知る人ぞ知るエミール・ブトミーらにより創設されました。その後、社会科学系のエリート養成校として発展し、フランスの政官界の有力人物の相当部分はこちらの出身者であることは良く知られています。大統領で言えばミッテラン、シラクがOBですし、現役有力者で言えば、社会党の最近の内紛の主役であるマルチヌ・オブリ現第一書記(党首)と前回の大統領候補セゴレーヌ・ロワイヤルは両者ともOGです。経済界では、日本の経団連にあたるMEDEFの委員長であるロランス・パリゾもOGだそうです。
 このように、かつては普通の(?)エリート校だったのですが、おそらく90年代辺りから猛烈な拡大路線を走っているようで、国際的なネットワークを広げています。今では世界260以上の大学と提携しており、6500名の学生のうち30%が留学生だとされています。実際、私の講義でも、20名ほどの登録者のうち、フランス人は数名で、3分の2以上が外国人留学生です。しかも、この路線はさらに進められるようで、半数を留学生にするという計画のようです。そのため、半数の講義は英語で、フランス語での講義は半分ということのようです。このように、その気になればすぐに世界中から学生を集められるというのは、アメリカには及ばないとはいえ、伝統国フランスの国際的なプレゼンスの強さを感じさせられます。
 学長の声明には大学ランキングへの言及もあり、英タイムズ紙のランキング(社会科学部門のことのようです)では、LSEは4位なのにシアンスポは105位と、低迷しているのが現状なのですが、トップレベルに引き上げたい旨が明言されており、それに向けて様々な改革が進行中ということのようです(ちなみに同ランキングでは京都大学は42位)。さらにちなみに、タイムズランキングによれば、シアンスポの学生の国際化レベルは世界トップレベルのようです(ということは他の指標が相当…)。 
 提携関係では、ニューヨークのコロンビア大、ジョージタウン大、ベルリン自由大学、LSEといったところとダブルディグリー協定を締結しています。日本の大学とは、ダブルディグリー協定こそないですが、国立・私立の有力大学10校(東京大、早慶など)との協定が存在するようです。京都でも大手三大学のうち、同志社・立命館とは全学レベルの協定があります(京都外大とも)。ですので、今日もシアンスポの学生が京都の街で勉学に勤しんでいるかもしれません。早稲田大などは、シアンスポ内に事務所があります(私の講義のある教室の近くなので、今週お邪魔してきました)。http://www.waseda.jp/jp/sp/s_message/051101.html
 このように多くの協定を結ぶのには、シアンスポのカリキュラムとの関係があります。ここは学部から修士に対応する5年制なのですが、3年次には全員海外留学ないし研修をすることになっているので、多くの協定が必要となるということのようです。
 教育内容としては、学際性を売り物にしているようで、確かに驚くほど沢山の講義が開講されています。ただ、個人的な感触では、特に公法のようなマイナー分野では、学生さんの前提知識に難があるので、若干やりくにさはあります。また、教員控え室には数百人分はあろうかというメールボックスがありますが、常勤教授はそれほど多くない(パンフレットによれば常勤教員は70名)ということは、ほとんどが非常勤ということになり、このあたりはどうなのかという感じもします。
 パンフレットによれば、教育目標として、知識の習得と並んで、コミュニケーション能力(語学だけでなく説得力ある口頭・文書表現)の涵養、及び一定の態度(知的な勇気、困難を克服する能力など)の養成が掲げられています。確かに、後二者もグローバル時代に国際的に通用する人材に求められる能力だと思います。もっとも、日本の大学でもこの種の目標を掲げることは珍しくないとは思いますので、実際にどのようなことをしているのかが問題なのでしょうが。この点、シアンスポにおいては、他の先生の話や学生の体験記を見る限りはレポート提出や口頭報告・議論が重視されているようです。もっとも、私の場合は諸々の事情に鑑み、普通の講義をしています。
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