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リール出張記(上) 

 機会があって、リール第2大学で日本の憲法のセミナーをすることになりました。大学院生向けの正式科目でないセミナーだそうです。リールという街は、ベルギー国境に近いフランス北部・フランドル地方の中心都市で、パリ(北駅)からは新幹線(TGV)で1時間ほどのところにあります。この2月は毎週1回、合計4回リールに行くことになります。日本でも京都から東京に新幹線で仕事等に出かけるのは嫌いではなかったので、久しぶりに同じような感覚になります(むしろ、1時間は短く感じます)。 

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パリ北駅の旧駅舎を移築したリール・フランドル駅

             
 この大学には、すでに数年前に九州大学の南野森先生が客員教授として講義をされ、ホームページに記録を残されているので、事前になんとなく雰囲気をつかむことができて大変ありがたいです。
  http://www.law.kyushu-u.ac.jp/~minamino/Journal/journal0205.html
    http://www.law.kyushu-u.ac.jp/~minamino/Journal/journal0305.htm
    http://www.law.kyushu-u.ac.jp/~minamino/Journal/journal0405.htm

 2月3日に初回があり、今週は2回目でした。初回は日帰りでしたが、2回目は受け入れて頂いた教授(南野先生のホームページでは「リュック」として登場)ともども、同じ大学の法史学の先生のご自宅にお招きいただき、さらには宿泊させていただき、翌日は市内観光をすることができました。 
 初回には、受入れ教授がやはり学内を案内してくれました。実は、フランスではこのところ大学改革との関連で、大学の研究者の待遇が大きく変更される(組織の責任者に評価権限を付与するなど)政令案が発表され、スト等で大荒れなのですが、このときも教員の控室では、反対運動の作戦会議らしきものが開かれていました。さらに、第2回の講義の日には教員・学生のデモが市内であったそうで、新聞にも出ていました。 

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街の中心ドゴール広場(グラン・プラスとも)と商工会議所の塔


 比較法、特になじみのない日本法の、しかも(たぶん)単位にならないセミナーにどれほど出席者がいるのかと思っていたのですが、いざ教室に行ってみると、ざっと20-30名ほどの学生さんが来ていました。話の内容は、受け入れ教授の「日本憲法と言えば9条だろう」というアイデアで、9条をめぐる出来事・議論を中心に、日本憲法の歴史、憲法訴訟論、憲法改正論議等を紹介するというものです。南野先生の場合とは違い、語学力の関係からアドリブがきかないので、きっちり原稿を準備し、しかし、いかに原稿を読んで(ばかり)いないかを示すふりをしながら原稿を読むという調子です。ただ、受け入れ教授が出席して下さり、節目節目に質問をしてくれるので、いずれにしても原稿通りには行かないのですが。 
 初回は、戦前の歴史、日本国憲法制定過程、日本国憲法の概要のお話をし、2回目は9条の制定史、9条をめぐる学説、憲法制定後60年代くらいまでの展開(自衛隊の創設、憲法改正論議・政府憲法調査会等)の紹介を中心に話をしたのですが、思ったよりも進まないので、残り2回が思いやられます。

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コメント 2

西南の森

ご無沙汰しております。時々アクセスしてはいつも楽しく興味深く読ませていただいております。今回は思いがけず僕の名前が出てしまいましたので、勇気を出して初めてのコメントです。
いやぁ、なつかしいですねぇ。是非ご講義の風景写真等もアップしてください!それにしても、20名~30名とはすごいですね。僕のときは10名もいませんでした。。。
それから、触れておられる大学改革、なんだかすごいことになっているそうですね。とっくに大学の自治がなくなっている(?)日本からすると、いろいろと複雑な気持ちになりますが、まぁフランス人よ、がんばれっ!と応援したくなります。このあたりの事情も是非ご紹介ください。
長々と失礼しました。お体に気をつけて、楽しく充実したパリ生活を!
by 西南の森 (2009-02-21 11:19) 

sog

 コメントありがとうございます。
 フランスでは制度上の「大学の自治」というのは元々あまりないように思いますが、研究者個人の自由は今回の改革でかなり影響をうけるようですね。ただ、ペクレス大臣が仲裁者を任命するなど、当初の計画はかなり後退するのではないでしょうか。それにしてもフランスの教授は(も?)、時間的には日本と比べてかなり恵まれているように思います。
 フランスの大学は、大学間競争が少しずつ始まっていることと、また、特にグランド・ゼコル(法学部ならシアンスポなど)との競争を意識せざるを得ないようで、リールのような地方有力大学や、さらにはもっと地方の小規模大学は不安を募らせているようで、フランス同様中央一極集中の国にいるものとしては、他人事とは思えないですね。面白いのは、リールでも、大学の裁量で決められる講師以下の採用では生え抜き重視派の教授と能力重視派があるようで、危機感が違うようです(同じ話を別の地方大学の先生から聞きました)。Luc教授は、リール大学の広報戦略の不十分さを嘆いていましたが、これも他人事ではありません。
 リールの講義は、南野さんのときとは違って前々からセッティングしたから人が集まったといっておりました。確かに、学期初めに配布する冊子にも、こういうセミナーがあるという言及はあります。とはいえ、日程が確定したのは直前ですし、決定後も、4回のうち2回は初回が始まってから日時を変更したりしているのですが…。
 ご紹介頂いたご同僚の先生には早速連絡しておきました。ありがとうございました。それにしても、絶妙なハンドルネームですね!

 


by sog (2009-02-23 04:28) 

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