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外国人の人権に関するGISTIのシンポジウム

 昨日(2008年11月15日)、「外国人の立場の司法的擁護(Défendre la cause des étrangers en justice)」と題するシンポジウムが、シテ島の裁判所裏手にあるパリ弁護士会館で開催され、覗いてきました。日本でこの問題を追う友人のS先生のお勧めによるものです。主催者であるGISTI(Groupe d'information et de soutien des immigrés)は、1972年に創設された移民支援の非営利団体で、1978年には外国人の人権に関する重要判決をコンセイユ・デタから引き出し、今回のシンポジウムはこの判決(GISTI判決)の30周年を記念するものです。
 http://www.gisti.org/spip.php?article1154
 シンポジウムは大変盛況で、350名の定員を大幅に上回る申し込みがあり、事前に「50名以上のキャンセル待ちが発生しているから、都合で来られない場合には連絡して欲しい」旨のメールが来るほどでした。ちなみに、同じメールには、「報告者が多く、9時ちょうどに始めたいので、8時半には来場して欲しい。その代わりに、朝食を提供する」という内容もあり、ちょっと面白いですね。
 当日の内容は、移民支援の現場に関わる弁護士や非営利団体スタッフの臨場感溢れる報告(不法入国者が収容されている警察施設の劣悪さを写真で示したり、不法入国者が大量に検挙されたとの情報に接し、各地の弁護士が大挙して現場に向かった話などは印象的です)や、法学、社会学等の研究者による研究報告など盛りだくさんでした。また、訴訟を受ける側のコンセイユ・デタからも、大御所ブリュノ・ジュヌヴォワ氏が登壇し、GISTIの活動のコンセイユ・デタ判例への寄与について好意的に評価されていました。また、聴衆の中には司法官(裁判官や検察官)もそれなりにいたようで、質疑時間には現場の実情の証言などがフロアから出されていたのも日本では余り見られない光景だと思われ、印象的です。
                                                                             gisti.JPG  ところで、会場で配布された資料集(写真)記載の説明によれば、GISTIは、前述の通り1972年に移民支援の現場で活動するソーシャルワーカーや支援団体スタッフと、法律家(弁護士や法学者)が協力して立ち上げた団体で、現場での活動と法律的なアプローチという2つの方法をとっている点が特徴であるとされています。法律的なアプローチについて言えば、数多くの訴訟を提起して判例の発展に寄与しているほか、情報公開法を使って多くの資料を公表したり、この問題に関する法的な議論に寄与するため、定期刊行物も発行しています。さらに、移民支援活動に携わる人々のために外国人法に関する研修プログラムを定期的に実施しているようです。
 興味深いのは、GISTIは孤立した活動家集団なのではなく、広い意味での社会的制度の中に位置づけられている点です。それは、例えば今回のシンポジウムの後援者に、パリ及びその周辺のいくつかの弁護士会、コンセイユ・デタ及び破毀院付き弁護士会、パリ第10大学基本権研究センター、ダローズ出版社(今回の記録は同社から出版予定)が名を連ねていることや、報告者にも前述のようにコンセイユ・デタの幹部が登場し、好意的な評価を行っていることにも現れています。また、今回のシンポジウムは、弁護士の研修プログラムとして位置づけられてもいるようで、これに出席することで、研修義務の一部を果たしたことになるようです。これは、大学で開催されるシンポジウムでも時折見られるように思いますが、弁護士による弁護士のための研修が主流である日本の弁護士研修から見れば特徴的かもしれません。
 制度への位置づけといえば、配布された資料集によれば、日本でもよく主張されるような寄付に対する税制上の優遇もあるようで、課税所得の20パーセント(ただし、これを超えた場合は5年間まで繰越しも可能)を上限に、最高で寄付額の66パーセントが控除されるとのことで、確かにこれは比較的好条件かもしれません。もっとも、寄付の額は収入の2割程度のようで、事業収入、補助金(公的補助金と民間財団等からの補助金)に続く第三の収入源に過ぎません。
 以上のような点からは、GISTIは日本の同種組織とは全く異なる巨大組織なのかと思われるかもしれませんが、そうでもないようです。ホームページ掲載の活動報告書によれば、2008年年初におけるGISTIのメンバーは208名(うち、弁護士は54名)で、事務局の有給スタッフは、パートタイムも含めて8名にすぎず、ボランティアによって支えられているようです。研修生も多く受け入れているようで、日本の司法修習に相当する研修弁護士も受け入れているようです。また、年間予算は2006年で約66万ユーロ(ざっと8億円くらいでしょうか)だそうで、活動規模を考えれば決して潤沢ではなさそうです。
 ともあれ、NPOが公共空間を支えるのは例えばこういうことなのか、と思った次第です。

(後日記(08年11月20日))
 このシンポジウムを紹介するフランス語のブログ内で、この記事が紹介(というかリンク)されました。どうやってこの記事までたどり着いたのかは謎ですが。
 http://combatsdroitshomme.blog.lemonde.fr/2008/11/14/a-la-redecouverte-du-premier-arret-gisti-ce-ass-23-juil-1974-ferrandiz-gil-ortega/#more-343


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