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公共放送改革法案の閣議決定

  フランスは先週から冬時間(日本時間からマイナス8時間)になり、早くも初冬の雰囲気です。そんな中、10月22日に放送法改正案が閣議に提出され、11月には議会での審議が始まると報じられています。
 本年(2008年)1月、年頭記者会見でサルコジ大統領は、公共放送のCMを廃止することに言及しました。広告放送が禁止されているNHKとは異なって、公共放送であるフランス・テレビジョンの財源は、受信料(1世帯当たり年額116ユーロ)と広告放送の2本立てとなっており、両者の比率は約7対3です。大統領の発言は、売上高の約3割を占めるCMを廃止しようというものですが、その意図について、公共放送から視聴率追求主義を追放することであると説明されています。他方で、大統領が民間のメディア企業の幹部と親しいことから、CMを民放に誘導するのが真の意図であるとも批判されました。
 いずれにしても、公共放送を縮小するのでなければ代替財源を見つけなければなりません。この問題やその他関連問題を検討するため、2月にジャン=フランソワ・コペ下院議員を委員長とする委員会が設置され、6月には報告書が提出されました。これを受けて大統領から基本方針が発表され、それによれば、09年1月から20時以降のCMを廃止し、11年12月1日(地上デジタル放送への完全移行日)から全面的に廃止するとされ、代替財源については通信事業者の売上高に課税(0.9%)するほか、放送事業者の広告収入に課税し(3%)、さらに、受信料を物価に応じて改定することとされました。また、現在、独立規制機関であるCSAが任命しているフランス・テレビジョンの社長について、政府が任命することにするとされました。

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 これに基づいて法案が作成される運びになったのですが、放送法制については、07年末に採択されたEUの視聴覚メディアサービス指令の国内法化も必要であったことから、放送法改正案は公共放送問題以外の点も規定することになりました。そして、法案作成作業は、内容が内容だけに調整が難航したようで、かなり遅れたようです。私が接した限りでは、9月下旬に閣議提出の見込みという報道が8月末に出たものの、冒頭に述べたように結局10月末になりました。
 法案の内容ですが、広告廃止問題については代替財源も含め上記の通りとなり、フランス・テレビジョンの組織については、現在持ち株会社制の下、フランス2、フランス3等、チャンネルごとの放送局が組織されているのを単一の会社組織とすること、社長については、CSAと上下両院の文化問題委員会の意見を聴取した上でデクレ(政令)により任命するとされています。なお、この機会に公共放送の任務(番組内容やコンテンツ制作に対する貢献等)についても再確認がなされるようですが、これは追って機会があればご報告したいと思います。他方、民放については、従来は映画放送中に1回しかCM中断が認められていなかったのを2回認めることとし、特に民放最大手TF1や、もう1つの主要民放M6への恩恵は大きいといわれています。視聴覚メディアサービス指令への対応については、ビデオ・オン・デマンド等のいわゆるノン・リニア・サービスに関する規定が改正されるほか、同じく同指令で条件付で認められたプロダクト・プレイスメントに関する規定も設けられるようです。
 放送・通信の融合が本格化し、公共放送の役割が各国で問われている中、アルバネル文化コミュニケーション相は「新しい公共放送を発明する」と述べて意気込みを示したそうですが、11月末から始まるといわれる議会審議では、激しい議論になりそうです。


















 

 

 


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