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文化遺産の日(Journées européennes du Patrimoine)(下)

DSCN2184.JPG 文化遺産の日の最終回は、1874年以来大統領府として使われているエリゼ宮(Palais de l'Élysée)です。これについてまず特筆すべきは、待ち時間です。午前9時に開場ということで、それに間に合うように入り口付近に赴いたところ、警官からあちらの列の最後に並べと言われて列をたどり最後尾を探したところ、歩けども歩けども最後尾にたどり着かず、ついにコンコルド広場を回り、シャンゼリゼに100-200メートルくらい入ったところでようやく最後尾を見つけました(写真奥の広いスペースがコンコルド広場)。1時間くらい並んだところで、ここから3時間待ちという立て看板にたどり着く有様で、あきらめようかと思いましたが、エリゼ宮を見学できる機会は他に余りないということで、がんばってみることにしました。

 

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 4時間くらい並んでようやく門をくぐり庭園に入ることができましたが、美しい庭を楽しむ余裕も無く、再び建物への入場の列に並ぶことさらに1時間、ようやく中に入ることができました。

 

 

 

 

 


DSCN2221.JPG まずエリゼ宮の東部分に入り、銀の間やポーランの食堂(これは70年代、ポンピドゥ大統領時代に改装されたもので、モダンな内装。同大統領が現代美術を愛好したことは、その名が付された現代美術館があることからも知られます)等を見たあと、一度外に出て、西棟に移動します。そこは祝祭の間とよばれる大広間で、大統領就任式や公式晩餐会などのセレモニーが行われるところです。今回の開放では、晩餐会のテーブルセッティングが再現されており、その豪華さに圧倒されます。隣の広間には、古いものでは100年程前の晩餐会のメニューカードが展示されていました。
 

 

 

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 その後は、広さという点ではそれほどでもない各部屋を見て回りますが、写真はミュラの間と呼ばれる部屋で、ポンピドゥ大統領時代以来、閣議に使われています。ミュラとは、ナポレオン1世の義弟で、1805年にエリゼ宮の所有者となったジョアキム・ミュラのことです。1階には、ほかにもいくつかの部屋があり、それぞれ由来があるところは、1722年に建築されて以来、時の最高権力者やそれに連なる人々が住人となってきただけあります。

 

 

 

 


DSCN2262.JPG ミュラの階段と呼ばれる階段を上がったところには、控えの間があり、ここには故人となった第五共和制の大統領(ド・ゴール、ポンピドゥ、ミッテラン)の肖像画が飾られています。
 

 

 

 

 

 

 

 さらに進むと、黄金の間に入ります。ここは、大統領の執務室となっており、選挙による君主と呼ばれ、強大な権力を握るフランスの大統領は、ここから様々な指示を行うというわけです。国は、膨大な数のアンティークの家具を保有しており、大統領は好みに応じて家具調度を選ぶことができるそうで、この写真に見られるような家具調度は、サルコジ大統領の趣味を反映しているということになります。
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 この黄金の間が見学コースのハイライトで、あとは2,3の部屋を見て、階段を下り、玄関から中庭に抜けることになります。中庭には、今回の開放のために、歴代大統領が使用した車両が10数台展示されていました。エリゼ宮に限りませんが、この文化遺産の日の開放のために、特別展示を用意してくれているも嬉しいですね。
 本来は、エリゼ宮の後に首相府であるマティニョン宮に回るつもりだったのですが、余りの待ち時間で力尽き、将来の課題として帰宅したのでした。

 最後に参考文献を紹介しておきましょう。山口昌子『エリゼ宮物語』(産経新聞社、2007年)は、タイトル通りエリゼ宮の歴史をたどったものですが、エリゼ宮の歴代住人の多くは政治史の中心人物であっただけに、エリゼ宮の歴史はフランス近代政治の歩みと大幅に重なります。細かいところを言い出せばまあ色々ありますが、新聞連載をまとめたもので、気軽に読める1冊です。もう1冊も新聞記者の手になるもので、西川恵『エリゼ宮の食卓―その饗宴と美食外交』(新潮文庫、2001年)です。数年前に読んだ本ですが、公式晩餐会のメニューに訪問客の国に対するフランスの見方が現れるということを、著者のワインと料理に関する豊富な知識を駆使して読み解いたもので、面白いです。


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