SSブログ

新聞・雑誌と消費税

 突然ですが、フランスの新聞は危機的な状況にあります。とりわけ、ここ数年来、ル・モンドやリベラシオンといった有力紙が続々と巨大産業資本の傘下に入り、政府(フランスでは大統領ないし政府と巨大企業との結び付きが日本よりも直接的であるように思います)及び巨大企業との距離が失われることへの懸念が深まっています。最近も日本の新聞で状況報告がありました(記事の存在をご教示いただいたNさん、ありがとうございます)。http://mainichi.jp/select/biz/news/20080715ddm012040163000c.html

1.jpg そんな中、6月末に機会があって「刊行物及び通信社に関する同数委員会(Commission Paritaire des Publications et des Agences de Presse, CPPAP)」というところを訪問取材してきました。この委員会は、現在のところ首相部局に属しているので、訪問先は国民議会の議場に程近い、首相部局に属する諸機関が入居している建物の5階にありました。
 フランスでは、冒頭に述べたような状況もあり、新聞・雑誌は様々な経済的な特典を国から受けており、一説によれば、新聞・雑誌の総売上高の1割程度がこうした助成によるものであるとも言われます。これら諸々の助成制度のうち、主要なものは消費税(フランスでは付加価値税)の軽減税率の適用(通常19.6%のところ2.1%)や郵便料金の優遇(日本でも第三種郵便物の承認制度がありますね)であり、この2つの制度の適用資格の有無を審査するのが、今回訪問した委員会です。個々の新聞・雑誌は、この委員会の承認証を携えて、消費税であれば税務当局、郵便料金であれば郵便局に助成の申請をすることになります。すなわち、委員会の承認がなければ助成が認められることはないため、相当重要な役割を果たしていることになります。


 今回の訪問は、こちらで知遇を得た有力な先生に紹介いただいたこともあり、事務局長自らのお話を聞くことが出来ました。取材の焦点はかなり具体的な審査手続等だったので、ここで紹介することはしませんが、政府による助成に依存することはメディアの自由にとってマイナスではないかという素朴な疑問については、要旨次のように答えてくれました。すなわち、助成資格自体は、個々のメディアの政治的傾向や具体的な内容を問わず認められるのであって、その点でメディアの自由が侵害されるということはない。他方で、国家助成により経済的な基盤が強化されることにより、巨大企業などの私的な経済的権力からの自由が確保されるのである、ということです。
 内容には原則として立ち入らないとはいえ、審査においては、申請してきた新聞・雑誌が公益に資するものかという微妙な判断を最終的にはするわけですので、関係行政機関の代表者のみならず業界の代表者が同数ずつ集まって構成することとして判断の正統性を確保すると共に、法令上の基準をさらに敷衍した具体的な審査基準を定めてこれをホームページに公開する(http://www.cppap.fr/rubrique.php3?id_rubrique=10)など、透明性にかなり配慮していることがうかがえ、日本の第三種郵便物の承認制度と比較しても、参考に値するように思われます。

 ところで、来週の月曜(21日)には、本ブログでもお伝えしてきた憲法改正の最後の手続である上下両院合同会議がヴェルサイユで開催されます。幸いにも、この会議の傍聴券を入手することが出来ましたので、次回はこの様子を紹介できればと思います。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。