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ヴェリーブ再び。

 以前も紹介した無人自転車レンタルシステム・ヴェリーブですが、昨秋の地下鉄等のストライキの際には利用が多く整備が追いつかない様子で、整備不良車が多く見受けられたのですが、最近はそれも少なくなりました。かといって利用されていないわけではなく、「すっかり定着した」と言うのが適当だと思われます。
 前回の記事では、個人的な利用感を紹介したのですが、先日、DirectmatinplusというLe Monde系の無料新聞に興味深い記事を発見したので、今回はそれを紹介したいと思います(Directmatinplus, le 19 mars 2008, p. 8)。

 2005年にリヨンで登場し、2007年にパリで採用された「セルフサービス自転車(Vélo en libre-service, VLS)」は、最近一種のブームになっており、すでにディジョン(名称は「ヴェロディ」)、アミアン(「ヴェラム」)、ペルピニャン(「ビップ」)、エックス・アン・プロヴァンス(「ヴェロ」)などなどで採用され、さらに、カン、ナント、ストラスブール、ボルドーといった都市でも近日中にお目見えするということです。特に大都市ストラスブールやボルドーは、従来独自の自転車政策を採用し、VLSから距離を置いていたのですが、この流れには逆らえなかったという格好のようです。例えば、ストラスブールでは、30年ほど前から自転車専用道路の整備に力を入れて自転車利用を促し、成果を挙げてきたのですが、今春の統一地方選挙では、右派の現職市長及び今回当選した左派の新市長の両者共に、VLSの導入を公約にしていたということです。このように、統一地方選挙の公約にVLSの導入が含まれていたケースも多いようです。

 ただ、VLSは環境にも健康にもいいというプラス面があるものの、特に財政面での課題もあるようで、記事の力点はその辺りに置かれています。たとえば、人口5万人のシャロン・シュール・サオーヌという町(ディジョンとリヨンの中間辺りに所在)は、50台の自転車と6つのステーションという小規模のVLSを設置したものの、会員はわずか50名ほど、つまり自転車の数と同数程度で、年間30万ユーロという経費を考えると、希望者全員に自転車を買ってあげた方がはるかに安いのではないかと記事では皮肉られています。
 また、VLSがうまく機能するには、自転車の「回転」(このような場合、フランス語でもtournentという語を使うんですね)が大事で、オルレアン(写真)での試算では、自転車1台が1日当たり6回利用されると、1回あたりの自治体にとってのコストが1ユーロとなり、トラム設置の半分程度の費用となるとされているのですが、実際には、VLS設置当初の利用は、1日当たり2回以下であったに過ぎないということです。その理由として、中小都市では多くの住民が既に自転車を保有しているという極めて分かりやすい事情が挙げられています。それくらい事前に分かったのでは、という疑問もわきますが、いかにブームに乗っているのかを示しているという見方も可能かもしれません。
velo_orleans.jpg

 さらに、費用負担に関しては、VLSは、屋外広告事業者が屋外広告パネル等の設置・管理の権利を獲得するのと引換えにVLSの費用を負担するというスキームになっているようですが、都市によってはこのスキームが成り立たず、自治体側が屋外広告事業者に不足分を支払う事態になっているようです。例えば、エクス・アン・プロヴァンスでは、市からJCドゥコー社に年間79万ユーロの支払いが行われているということです。
 記事は最後に、こうした問題点に鑑みて、いくつかの都市圏では、VLSではなく、自転車の長期貸出し制度の採用を検討していることを伝えています。これはかつてボルドーで行われていたもので、ステーション設置等、大掛かりなシステムは不要なので、確かに費用は抑えられそうですが、自転車くらい個人で買ってもいいような気もします。


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